Research Note #3: オフラインや対面調査をオンラインへ移行することに関して


COVID19
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折からの新型コロナウィルス問題により、対面式の調査は事実上一斉休止となりました。あなたがこれら調査からのインサイトを必要とするクライアント側のリサーチャーであろうと、ビジネスが縮小している調査会社側の人であろうと、それらの調査をオンラインで行うチャンスが今到来しています。このリサーチノートシリーズでは、オフラインでのプロジェクトをオンラインへ移行する場合の、データ収集とサンプリングの両方の影響を整理し、新しいリサーチの企画をする際の留意点を紹介します。

「ちょっとした変更」もしくは「大きな変更」のどちらになるのか?かつての「通常」な状態に戻るのか?

私たちが最も頻繁に受ける質問は、現状に対応するためにどのような変更を行う必要があるか、ということです。通常、これらの質問は定量を専門とするリサーチャーから寄せられることが多いです。さらに詳しく調べると二つの懸念が確認されています。ひとつは、新型コロナウィルスのパンデミックによる人々の行動習慣やデモグラフィック情報の変化に焦点を合わせ、リサーチプロジェクトの設計を適切に調整する必要があるということです。もう一つはこれらの変更を一時的なものと考えるか、または永続的なものと考えるかどうかです。ただ多くの場合、これらはサンプル割付またはウェイト付けの再考へ回答が行き着きます。

一方のオフラインのリサーチャーはより根本的な質問をせざるを得ません。「すべての調査手法をオンライン化する必要がありますか?」という具合にです。何といってもかつては、そもそもオフライン調査手法を選択する理由がありました。世界的なロックダウンの期間とその潜在的な後遺症は問題の一部にすぎません。より大きな懸念は、リサーチプロジェクトがオンラインで効果的に実施できるかどうかです。

業界の一般原則として、私たちは常にすべての分野のリサーチャーの方々に、テクノロジーが私たちの業界を変えている例を積極的に調査するようにアドバイスさせていただきました。今回の危機を考えると、選択肢を最大化するためにはこのような行為が更に理に適っていると思えます。

なぜ私たちがオフラインでのデータ収集とサンプリングを選択するか

リサーチプロジェクトには、データ収集とサンプリングという二つの重要な要素があります。特に定量的なリサーチ手法を選択した場合にそれら二つの要素への影響を考え、リサーチ目的に適しているかどうかを判断します。往々にしてポジティブな理由があって選択しますが、例えば、データ収集やサンプリングの観点で何らかの優位性があるとき等です。また一方でネガティブな理由がある場合には別の方法の検討に入るわけですが、その際にデータ収集やサンプリングの観点でその選択肢を選択できない場合もあります。

歴史的にいうと、オフラインのデータ収集を選択する理由は、基本的には肯定的でした。主にオフラインの方法を好むのは、人々をより詳細に観察し、人々がなぜその物事を行うのかを理解しやすくするためです。対面インタビューにより複雑なテーマを調査することができますし、また街頭調査によりその「瞬間」に人々を捉えて、人々の経験/体験が新鮮な状態で質問することができます。

逆に、オフライン手法を選択する際のサンプリングに関する理由は否定的な傾向もあります。何年もの間、伝統的なパネルからサンプリングする手法では、小規模な国々ではレアターゲットへのアクセスが行き届かない課題を露呈していました。ターゲットの母数が限られているため、出現率の低いプロジェクトの実施にコストが掛かり過ぎるというわけです。それらのケースでは、街頭調査等が、高額なコストが掛かるとわかっている調査対象者の出現を容易にできることから正当化されています。

Moving Online:データ収集に関する考察

様々なオフラインの調査手法のリストをここで書き並べることはしません。しかし、かつてそれらのオフラインの手法でのみ行われていたプロジェクトの、オンラインデータ収集を可能にした、新しいプラットフォームが爆発的に広まっていったのは紛れもない事実としてあります。オンラインのフォーカスグループインタビューから、ポータブル/デジタルの神経科学を応用した技術、基本的な機能からAIによる分析まで、日々新たに目にすることがたくさんあります。あなたのお気に入りの業界団体(ESOMAR、Insight Association、MRS、等々)は潜在的なパートナー探しに大変役立ちます。Research Live、Quirk’s、GreenBook、Research World(ESOMAR)などの出版物に毎週表示される多数のブログ記事を検索することもお勧めします。

一方で明らかなのは、新しいデータ収集手法で調査を実施する前にはテストする必要があるということです。本番さながらの条件での最初から最後までの完全なテストは、プラットフォームの動作だけでなく、プラットフォームを使用するために必要なプロセスと、そのアウトプットの大枠を理解するために必要不可欠です。

また最も重要なのは、リサーチャーがそのプラットフォームのリサーチ結果の出方に注意を払う必要があるということです。オンラインでの実査は注意力の低い回答をもたらす可能性があります。回答者の回答環境に対する制御が明らかに低下しているのです。これに言及しているのはリサーチャーを落胆させるためではなく、警戒を促すためです。とりわけ、リサーチャーは比較的安い価格設定に疑いを抱くべきです。ある程度の低コストが予想されますが、大幅に安い価格設定は、回答者側の思慮深い回答と忍耐力の低下につながる可能性があるからです。

Moving Online:サンプリングに関する考察

何年もの間、対面インタビュー(またはオンライン時代のCATIでさえ)は、調査協力全般、例えば時間通りの協力者の参加の必要性、などの問題を解決してきました。当初はインターネットがほとんど普及していなかったため、当時を経験したリサーチャーは「デジタルディバイド(ネット環境がある人とない人の情報格差)」についての長い論争を覚えているでしょう。スマートフォンが安価に買え、電話がまだ線で繋がっていた時代には想像もできないインフラによってサポートされているデジタル時代では、サンプリングに利用できるオーディエンスの範囲と多様性が飛躍的に広がりました。さらに、新しい国で新しいパネルを作るために大規模な投資をするという考え方は、もはや古風で滑稽に思えるほどです。昨今、サンプルの供給は主にシステムプログラムによって行われています。その様なプログラムのAPIは、お客様から頂いた調査スペックとサンプルオーダーをデマンドサイドとサプライサイドへ瞬時に送信するのです。

テクノロジーにより、サプライヤーはサンプルの無駄な浪費を大幅に削減し、適切なタイミングで適切な調査に、適切な人を見つけることができるようになりました。またそれらプロセスの自動化により、消費者行動のプロファイリングが大幅に深まります。さらにより洗練されたサプライヤーはアルゴリズムを使用して回答者の見込み評価を行い、調査を完了する確率を推定して、完了数を開始数で割ったものとして定義される非常に重要なコンバージョン率を最大化しています。

この進歩は、すべてのオーディエンスが常にオンラインでその大多数をサンプリングに利用できると言っているのではありません。オーディエンスにアクセスできることは、人々が積極的に調査に協力することを意味するのではなく、ニッチなオーディエンスのサンプルを見つけることが、かつてより難しく無くなったことを意味しています。

オフラインのリサーチャーは、オンラインプロジェクトで使われているサンプル設計を流用するときには注意が必要です。デフォルトの設定は、サプライヤーが全国的に代表性のあるものと見なすものであり、それ故サプライヤーによって異なり、場合によっては真の全国的な代表性とは何の関係性もありません。プロジェクト自体がこのレベルの全国的なカバー範囲を必要としない場合もあります。そしてサプライヤーは主にインタビューの長さ(LOI)と出現率(IR)に焦点を当てます。これらの測定基準はオンラインのお見積りに必要不可欠な要素ですが、オフラインのプロジェクトでは部分的にしか言及されないことがほとんどでしょう。こういったプロジェクトの特徴が営業担当者だけでなく、プロジェクトマネジメントチームにも明確に理解されていることを確認してください。

オフラインのリサーチャーは、オフラインプロジェクトに対するオンラインサンプリングの費用対効果を考えると、何よりもまずはサンプルサイズを増やす誘惑に打ち勝つ必要があります。とにかく最初にテストを実施し、必要な情報が得られていることを確認するのです。そして覚えておいてください。その時点で、利便性の高いオンラインサンプルに満足している場合には、今後さらにオンラインでプロジェクトを実施していく場合に何が変わるだろうか、ということを自問してください。

「真実」は一定ではない

熟練の域に達したリサーチャーたちは、使用する手法に応じて、同じ質問に対して異なる回答を得ることができることを理解しています。そのため、手法を替えることによって確実に新しいバージョンの「真実」が生まれるのは当然のことです。リサーチャーでない方々に伝えるのが最も難しいのは、比較する双方の手法面での不完全さのために、異なる手法は異なる結果をもたらすということです。既存の手法が社会に受け入れられその結果が真実とされた場合、さらに困難な状況になります。人々は新しいデータを不審に見るでしょう。この種の調査手法の変更のマネジメントについては、次のリサーチノートで取り上げますのでお楽しみに。

まとめ

もしあなたが、新型コロナウィルス問題で調査手法の変更を検討しているなら、それはあなた一人だと思わないでください。少なくとも、これらの変更を検討し調査してみることで、間違いなく選択肢の幅が広がります。後々開始することよりも早く開始することは、テストの振り返りとテスト期間そのものを長く取れることを意味します。状況に明るい面がある場合、評価しなくてはならない複雑な選択肢があったとしても、実行しなくてはならない手順は単純で明確と言い切れます。我々Cintチームは、それらの問題に取り組んでいるあなたに専門家のアドバイスを提供することができるのです。


Written by: JD Deitch (COO at Cint)

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