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Restech(リサーチテック)業界における不正対策の効果的な戦略

Josh Baines

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はじめに

市場調査のエコシステムにおいては、データ品質が最優先事項です。意思決定を支える高品質なデータへの依存度が高まるなか、不正はリサーチ/インサイト担当者にとって重大な課題となっています。

不正はさまざまな形で現れます。単独の実行者によるものから、実在の人や実機を装える高度なスクリプト不正技術を考案・展開できる組織化された不正ネットワークまで、多岐にわたります。

これは誰にとっても問題です。実際、Cintが2024年末に実施した調査では、顧客の81%が「現在の最重要課題は不正である」と回答しました。また、62%が「2025年以降で最優先で対処すべき事項も不正である」と答え、業界全体で強固な防御策が急務であることが浮き彫りになりました。

データ品質を取り巻く環境が変化する中、Cintは業界の有識者と連携し、ワークフロー全体で不正に的確に対処するためのソリューションの特定、導入と知見の向上に注力しています。

共通の課題とCintのソリューション

不正行為者は、悪意ある目的で調査に侵入するためにさまざまな手口を用います。

本セクションでは、市場調査で最も一般的な品質課題であるクリックファーム、ゴーストコンプリート、そして人工知能(AI)の三つを取り上げ、それぞれがどのようにデータの完全性を損なうのかを示したうえで、その検知・防止戦略を提示します。

ゴーストコンプリート

ゴーストコンプリートとは、サプライヤー側にはコンプリートしたように見える一方で、実際にはバイヤー側では該当の回答者が調査にエントリしていない/コンプリートしていないと見なされる回答を指します。リサーチャーにとっては、プロジェクトが完了したと誤認したサプライヤーがサンプル供給を一時停止する事態につながります。バイヤーとサプライヤーの双方が再調査や支払い済みインセンティブの回収を余儀なくされ、時間・コスト・信頼が浪費されます。

ゴーストコンプリートは、市場調査業界で最も解決可能性が高い問題です。調査のリダイレクトが保護されていれば、不正行為者がそれを操作する余地はありません。Cintは、APIを用いてリダイレクトリンクを保護するサーバー間連携(S2S)ソリューションを構築し、Cintのプラットフォームとバイヤーのプラットフォームの間で発生し得るリンク改ざんを排除します。S2Sはデータ品質を高め、すべての関係者にとってリダイレクト不正のリスクを低減します。

クリックファーム

クリックファームは、報酬目当てに調査を大量に不正回答する大規模な不正オペレーションであり、リサーチ業界のデータ完全性にとってもう一つの脅威です。典型的には、人手によって大量の不正コンプリートが発生します。大人数を一室に集めて作業させるケースから、一人が複数デバイスを同時に操作するケースまで様々です。技術の進歩により、クリックファームは人間+スクリプト/ボット/AIを組み合わせた手法も用いるようになっています。

クリックファームは、その速度と規模ゆえにリアルタイム検知が困難です。技術が高度化するにつれ、バイヤーやサプライヤーが不正回答と真正な回答を見分けることはますます難しくなっています。その結果、重大な被害が出るまで組織が不正の規模に気づかないことがあり、インサイトの毀損とリソースの無駄につながります。

この課題に対し、Cintは独自のTrust Scoreモデルを活用します。AIと機械学習により不正を能動的に検知、防止します。数十億件規模のトランザクション横断の行動を分析し、回答者レベルで不審な活動にフラグを立てます。さらに、高度なボット検知ツールを提供するサードパーティのセキュリティベンダーとの連携、VPN検知や不正スコアリングなどの戦略的な事前スクリーニングを組み合わせ、矛盾を露呈させて、調査結果に影響が出る前に不正参加者をふるい落とします。

人工知能(AI)

人工知能(AI)は、医療から教育まで多くの分野でイノベーションと進歩の機会を生み出す一方で、不正コミュニティが攻撃手法を高度化する機会も与えています。真摯な回答者が、自己の意見に基づく回答の成形をAIに支援させる行為をどこまで許容できるのか、といった倫理的な課題もリサーチャーに突きつけられます。

本物の人の回答者は、信頼できる市場調査インサイトの創出に不可欠です。データの完全性を守るため、Cintはすべての回答者の検証に注力するとともに、サプライヤーと協力して高品質で不正耐性の高いコミュニティの構築を進めています。「当社の使命は、無効コンプリートを継続的に減らし、最高品質のサンプルを提供することです」と、Cintのシニアディレクター・オブ・プロダクト、フィリップ・ローゼンベック(Philipp Rosenbeck)は述べます。AIに関連する脅威に対するCintの対応については、「Fighting bots with bots: how to combat AI-driven fraud」もあわせてご覧ください。

不正排除に向けた協働

品質は、市場調査のプロセスに関わるすべての当事者が負う共通の責任です。不正行為は絶えず進化しており、不正者は回答の収集の最も弱い部分を狙います。互いに連携し、関係者全員が調査プロセスの保護において自らの役割を果たすことが、不正と戦いデータ品質を向上させる鍵です。

バイヤー向けの品質

品質およびその影響は、サプライヤーにとっても同様に重要です。Cint にはサプライヤー向けの推奨事項について頻繁に問い合わせが寄せられます。低品質を寄せつけないために検討できる領域を以下に示します。

  1. リダイレクトの完全保護: バイヤーであるあなたには、リダイレクトを完全に保護することでゴーストコンプリートを根絶する手段があります。Cintのサーバー間連携(S2S)を活用し、ゴーストコンプリートの影響からプロジェクトを守りましょう。
  2. 良質な体験の設計: ローンチ前に自分自身で調査をテストし、回答者の立場で体験を点検してください。回答者体験の配慮はデータ品質を高めます。短い調査(14 分未満)と適切なターゲティングを意識しましょう。
  3. 実査中のチェック: 望ましくないパネリストを強制終了(terminate)するチェックを設けることで、後工程のデータクレンジング時間を節約できますし、トラップ設問を入れて不注意なパネリストを特定しましょう。複数ベンダーを使う場合は、重複排除ツールを用意することも検討します。調査内の質問やチェックを通過できない場合に、データを非承認にできる仕組みがあればその回答者は強制終了させてください。インセンティブが得られず不正者の抑止例になり、必要サンプル量の見積り精度が上がることでサプライヤー/バイヤー双方にとっても良い打ち手となります。
  4. 迅速なリコンサイル: データを却下/非承認する理由(例:コピペ、ボットなど)をできるだけ早く共有し、サプライヤーが不正者の特定、対処を追加被害が出る前に行えるようにしましょう。

サプライヤー向けの品質

品質およびその影響は、サプライヤーにとっても同様に重要です。Cintにはサプライヤー向けの推奨事項について頻繁に問い合わせが寄せられます。低品質となる要素を寄せつけないために検討できる取り組みを以下にご案内します。

  1. リンク改ざんの抑止: リンク改ざんは、業界が直面する不正行為の中で最も対策可能なものです。パネリストが触れるすべてのリンクのうち、サプライヤーであるあなたが管理権限を持つものは必ず保護してください。たとえば、リンクにハッシュ化やHTTPSを適用し、改ざんの兆候をモニタリングしましょう。
  2. パネリストの精査: リクルート段階での厳格な精査と、調査送客前のスクリーニングにより、後工程での損失を軽減できます。このために、調査終了(terminations)、リバーサル(reversals)、プロファイル変更を含むパネリストのパフォーマンスを確実に記録し続け、不正行動を示す異常値やフラグをモニタリングすることを推奨します。
  3. サブソースの監視: 受け入れ前に精査するプロセスがあり、リバーサル率、高ドロップ率、低コンバージョンなどの指標でパフォーマンスを注視し、問題を早期に把握、対処できるようにしましょう。パネルのパフォーマンスを継続的に監視しながら、不正回答者を計画的に排除しパネルの健全性を維持、向上できます。
  4. 回答者ワークフローの保護: 運用面と技術面の対策により、あなたが関与する回答者ワークフローのあらゆる部分を保護する姿勢を持ち、不正の抑止に努めてください。

バイヤーであれサプライヤーであれ、万能な解決策は存在しません。時間をかけて選択肢を試し、自社に最適なアプローチを見つけてください。

おわりに

不正は規模と巧妙さの両面で進化を続けています。サンプルワークフローの完全性を担保するには、エコシステム全体の複数のステークホルダーの関与が不可欠であることは明らかです。

Cintは、先進的な不正防止ツールの開発、透明性あるパートナーシップの推進、そしてバイヤー/サプライヤー双方のデータ保護に資する知見の共有を通じ、常に一歩先を行くことを約束します。

Cint の継続的な品質への取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。

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