テイラースウィフトが今年のポップカルチャーの中で最も多くの話題と注目を集めたとすれば、人工知能(AI)の台頭とAIが仕事の脅威となる可能性が、最も多く取り上げられ注目を集めました。
2023年を通じ、広告や市場調査関係のイベントにおいて、AIの導入とその業界への影響に関する議論で埋め尽くされました。
2023年初旬に、CintとAdvertisingWeekはこれが注目の話題になると認識し、英国、オーストラリア、米国を対象に、職場でのAI台頭にどのように対応しているかを共同で調査しました。
これらの調査結果は、AdvertisingWeekのグローバル各地域で共有されたほか、米国ではデンバーで開催されたTMRE、シンガポールのESOMAR The Art & Science of Innovationにおいてマーケティングリサーチ業界の関係者に紹介されました。そして今、このCintブログで皆様にお届けできることを弊社は大変嬉しく思います!
方法論:3か国での調査
CintはAdvertisingWeekと共同で、職場におけるAIの活用状況と認識を明らかにするため、3か国で比較調査を行いました。これらの調査には、各地域でフルタイムまたはパートタイムの仕事をしている1000人が協力してくれました。そのサンプル構成は、性別と年齢が国勢調査と同じになるようにバランスを取り実施しました。
調査実施の地域と実査時期:
- 英国: 2023年5月(AdvertisingWeek EUとの共同調査)
- オーストラリア: 2023年8月(AdvertisingWeek APACとの共同調査)
- 米国: 2023年9月(AdvertisingWeek NYとの共同調査)
AIに対する意識の乖離: 従業員の行動と雇用者側の統制
「職場でAIを使っているのを上司が知らない」という状況はありませんでしょうか。
調査結果から目立った傾向のひとつは、若手から中間管理職レベルの従業員によるAIの導入に関する考えは、上級管理職や経営幹部のそれとの間に大きな隔たりがあることでした。また、従業員による職場での活用と、企業が導入しているAIポリシーやその規制との間にも乖離がありました。
実務経験15年未満従業員の62%が、すでにAIを仕事に活用していると回答し、そのうち20%は上級管理職には共有していないと回答しています。
組織のシニア層(主に団塊の世代とジェネレーションX)は、AIの機会や脅威を実感していなかったのです。
– ルース・モーティマー、AdvertisingWeek グローバル・プレジデント(BBCニュース)
さらに、「AIの活用に関する企業の考え方や指針と、中間管理職や従業員がどのようにAIを活用すべきと考えているか」との間の分断が浮き彫りになっているのです。回答者の21%は、自社が社員にAI活用を積極的に奨励していると答えていますが、管理職の65%は、自社でもっと多くの社員がAIを活用すべきだと考えています。
驚くべきことに、5月実施の初回調査から9月の最新調査までの5ヶ月間でも、従業員の利用状況と雇用者の方針との間に大きな変化はなく、米国においては従業員の55%は会社にAI活用方針の策定することを望んでいるが、すでに策定している企業は全体の19%に過ぎなかったとの結果が出ています。
この調査結果は、企業が早期に方針を打ち出したか、あるいはまだ全く打ち出していないことを示唆しているといえるでしょう。
AI導入競争で、アメリカ人は遅れをとっている
Cintのイベントマーケティング担当アソシエイトディレクターであるアリエル・マッドウェイとシニアマーケティングマネージャーのキャサリン・ライドバーグが、2023AdvertisingWeek NYにおけるプログラムAdvertisingWeek 360ポッドキャストの番組に出演した際、ポッドキャストのホストは、「AIの導入についてがAdvertisingWeekイベントプログラム全体の半分以上のトピック」であったことを指摘し、加えて、「米国人が壮大なAI競争で遅れをとっている」と聞いてショックを受けたと述べていました。
調査によると、AIを使って仕事をこなしたことがあると答えたのは、英国やオーストラリアの1/2に対し、米国では全体の1/3に過ぎませんでした。
米国の従業員は、AIツールに精通しており、仕事でAIを使うというアイデアに興奮している。しかしながらAIをそれほど積極的に活用していない。このデータによると、米国の従業員はAIについてもっと学びたいと考えておらず、特に、生産性を向上させるためにAIを導入する方法を決定することにあまり関心がないようです。
– Cint シニア・マーケティング・マネージャー キャサリン・ライドバーグ(AdvertisingWeek NY)
米国でAIの導入率が低いことを理解する際の注意点は、AIを使用している米国従業員においてはその使用頻度が高いことです。英国やオーストラリアに比べ、米国人は毎日または毎週AIを使用している割合が非常に高いのです。そのため、米国ではAIを頻繁に使用する人と全く使用しない人の間で格差が広がっていると考えられます。
諸刃の剣としてのAI
職場で、あるいはそれ以外で、AIの議論を耳にしたとき、あなたはどう感じるでしょうか?
無条件に未来に期待しているのか、それとも不安でいっぱいなのか。
もしかしたら、その両方かもしれません。
AIの誕生は科学技術の進歩であり、日常生活でのAIの導入は、より人々の感情によってもたらされる現象となるでしょう。
今回の調査より「AIをどのように感じるかという質問」に対し、3地域のすべての人々が、興奮や好奇心から混乱や恐怖まで、幅広い感情を抱いていることがわかりました。
興奮の要因: コンテンツ生成とブレインストーミング、有用性、時間の節約。
懸念の要因: 創造性の喪失、判断力の喪失、社交性の喪失、AIツールによる監視。
そして何よりも、雇用の安定に対する懸念です。各国調査対象者の50%以上が、自分の仕事がAIに取って代わられることを心配していると回答しています。
AIに仕事を奪われることを最も懸念している年齢層は、Z世代とミレニアル世代でした。最も懸念している人々の職位は管理職であり、最も懸念が高い業界は、ハイテク業界と金融業界でした。
さらに、広告業界では、回答者の2/3がAIの利用を懸念しています。
これらの層は最も強い懸念を抱いていますが、同時に最も導入が進んでいる層でもあり、実際にAIに親しみ、利用したことのある人ほど、AIに対して強い感情を抱きやすいという傾向が浮き彫りになりました。
AIを使えば使うほど、AIについて知れば知るほど、AIには居場所があり、エキサイティングなものだと考え、その未来に目を向けるようになります。つまり、知れば知るほど、パンドラの箱を開けてしまうようなものなのです。
-アリエル・マドウェイ、Cintイベントマーケティング部門アソシエイトディレクター(AdvertisingWeek 360)
前向きな視点: インサイト業界、マーケティング業界、広告業界におけるAIに期待すること
2023年が終わろうとしている今、AIが話題を独占する傾向は終わりそうにありません。
今年の調査に基づき、来年における各業界の予測をいくつか紹介します:
- AIツールとの連携は避けられないものになるでしょう。AIと競争するのではなく、AIを活用している人材と競争することになるでしょう。
- 現在AIに関する方針を策定していない企業は、リスクを軽減しながら、AIが生み出す可能性からベネフィットを得るために、AIの導入を開始するでしょう。
人間に例えるとAIは思春期を迎えているといえます。この先AIは成熟し、ガードレールが設置された道を進む必要があります。これは、a)AIが将来のインサイト業界にどのような影響を与えるかの視点と基準を策定するための業界全体による規制、b)監視・所有データの共有・漏洩のリスクを避けるためのAIに関するポリシー策定、またはc)社内AIツールを導入する企業やチームによって、大きな変革がもたらされるものと思います。
-オスカー・カールソン(Cint、最高イノベーション責任者)&ジェームズ・ターナー(Delineate、最高技術責任者)(TMRE)
我々は今後1年間、職場におけるAIがどのように成熟していくかを注視し、その結果をお伝えしたいと思います!